私が読書好きなのは、時々記すところですが、普段ご紹介する一般受けしない本ばかり読んでいるわけではないのです。取り寄せしないと買えない本をよく選んでいるのは事実ですけど。最近は時間がないので、小説を読んで楽しむことができなくなってきました。でもメインディッシュばかりじゃ、苦しいですよね。美味しいデザートを口は欲します。今年3冊目には、大好きな黒川博行さんを選んでみました。 螻蛄(けら) 黒川博行著  新潮文庫  940円文庫で940円ですから、746ページの長編です。一気に読めました。著者の黒川博行さんは、「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞した、関西が誇る作家です。何と言っても会話がおもしろい。会話以外の情景描写や心理描写がほとんどない。会話のみでぐいぐいと読者を場面に引き込みます。その中でも私のお気に入りはこの「疫病神」シリーズです。ヤクザの桑原と一応カタギの二宮のコンビが引き起こす一攫千金を狙うシリーズです。ヤクザの本質が「ええ服着て、美味いもん食うて、きれいなネエチャンとつるむ」これに集約されると読んだときは胸落ちしました。まぁ男はそんなもんで、手段がちがうだけですもんね。草食男子にはわからんやろけど。シリーズは今、5作発表されています。 産廃をめぐる闇を描く「疫病神」  北朝鮮にむらがるヤクザ政治家を描く「国境」 宅配業者をめぐる警察とヤクザを描く「暗礁」 そして今回の宗教法人の財産をめぐる暗闘を描く「螻蛄」そしてまだ読んでいないけど、おもちろいにちがいない「破門」ぜひヤクザを毛嫌いしている人も、読んでみてください。不思議と読後感がいいのが氏の作品です。根底にあるやさしさが、そうさせているのかもしれません。