今や基幹病院ではほぼ100%電子カルテが導入されています。当院でも7,8年前に導入しました。紙カルテとどちらがいいでしょうかって?長所短所がありますね。電子カルテはレントゲンや検査結果、写真など同時に保管できるので、過去の資料を瞬時に呼び出せます。また診察終了と同時に処方箋や領収書の発行ができるので、診療後の待ち時間が非常に短くなる利点があります。短所は、医師にかかる負担が非常に多くなることです。以前なら処方箋の発行など受付で行ったわけです。紙カルテだと自分で記入するので誤りはほぼありません。ところが電子カルテは薬剤などもマウスでクリック。薬剤一覧にはよく似た薬剤がずらっと並んでいるので、ちょっとしたことでまちがった薬剤を選択する可能性が高くなります。それをしないようより慎重なパソコン操作を要求されます。当然カルテもキーボードで打ち込みます。ブラインドタッチできる医師なんてほとんどいないですよ。皆さんもワープロソフトでおかしな変換をすることがおありでしょう。診察室では笑い話ではすみません。「最近の医師は画面ばかり見ている」という批判が多いです。私はこれに対し、猛烈に反論します。「画面を操作するのは医師の仕事ではありません」。ここにも日本の医療の貧困が表れています。「ふつう」の国では、医師の横にクラークがいて医師の口述を打ち込みます。これだけで診察はスピーディーになり、誤りも減ります。患者さんのお顔を拝見する時間も増えます。当院は整形外科ですから、ベッドで患者さんの手足や腰をいろいろと触診します。その後画面に向かいます。当然、診察時間は延びます。長時間待った患者さんの皮肉に、つい「倍返し」してしまう気持ちがおわかりいただけるでしょうか(大人げないのはわかってるけど)。文句を言うなら医者にでなく、貧困な医療行政をしている国に言え!医療は金がかかるのだ。あの医療費ではクラークなんて雇えませんからね。医者に文句を言ってる限り、為政者の思うつぼだと心得てください。ちなみに電子カルテを導入されてきたのは、医療機関の診療実績をオンライン化してデータを蓄積し、医療費削減を国が推進したいからです。劣情を利用されている国民は、もう少し賢くなるべきでしょう。まぁ、今の安保法案を「戦争法案」なんて言ってる奴らを観てる限り、無理かな。ついでに言いますと、電子カルテを導入し、私は年中肩こりと腰痛・下肢痛に悩まされることになりました。運動する時間も確保できなくなりましたし。