整形外科の性格上、障碍者の患者さんの診察は他科より多いと思います。身体障碍、精神障碍、知的障碍など色々な障碍があります。
これらの方々が少しでも不利にならぬよう、医療費の減免などの制度があります。(年々後退しているのが腹立たしいのですが)。
その中で「明らかに障碍があるのに、なんで公費の負担がないの?」と疑問に思うことが多いのです。
障碍があると、身体であれ知的であれ、生きるのに不利な状況に置かれるのはまちがいありません。それを少しでも埋めるのが福祉でしょう。つい先日、その答えに出合いました。
「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治著
著者は精神科医で医療少年院などに勤務した経験を持ちます。そこで出会った「いわゆる非行少年」が実は多くが知的障碍を持つということです。
しかも現在の決まりでは、「知的障碍はない」と分類される、境界にある障碍者であるということ。行政の予算の制約から、知的障碍者の線引きが低く設定されているのです。
現在では約2%が当てはまるのだそうです。以前の基準だと14%がそうなんだそうです。
「自分は障碍者じゃない」と喜んでいられません。この12%の子供達は、当然学業についていけません。加えて発達障碍が併存することもある。
そうなると学校では「正常」と通知されている子供達ですから、「怠けている」「注意力散漫」などとして、ひどく叱られます。またいわゆる知能はいろんな分野の総合判定なので、ある分野だけ劣る場合、「ふざけている」の烙印を押されます。また同級生からイジメられます。
そうして彼らは「自尊感情」が低くなります。そして結果、「非行」といわれる行動に走る。もちろんすべてではないけれど、こういう事例が多いのだそうです。
また親ももちろん気づいていない。検査しても「正常」と認定される範囲なのですから。行政の都合で不幸な人々(加害者、被害者含めて)が発生しているのではないか。と著者は問います。
とても素直で優しくて、でも軽い知的障碍と手の麻痺を持つ、以前通院されたある女性患者さんを想います。
本人の責任でない、いわれなき苦痛、差別、経済的困窮をどうにかできないか。行政だけの問題なのか。
地を這うアリ以下だけど、私にも何かできないか、改めて心が苦しいです。