医者に白衣はつきものですが、私は年中半袖の白衣を着ています。いわゆるハイネックで、横ボタンまたはファスナーおもの。「先生、よく寒くないですね」と言われます。そりゃ冬は少し寒いですよ。医者になって30年ずっとこれです。患者さんに元気に見せかけるのも大事なんです。1960年代の医療ドラマの主人公であるベン・ケーシーが着用していたので「ケーシー」と言われています。日本では初めて心臓移植に挑戦した和田先生が着用したのが世間的には最初でしょうか。それと最近、私が夏場に着用する「スクラブ」という手術場や救急で好んで着用されるVネックのものがあります。これは「ER」でジョージクルーニーが着ていてかっこよかったですね。ではなぜ冬でも半袖なんでしょう?ヒントは外科系です。外科系科目では手術や、怪我の手当てをします。つきものがガーゼ交換。最近は頻繁に交換するのはよくないと、抜糸まで一度も診ないなんてこともあるようですが、体液や膿が出てる場合はそうもいきません。「そうか。袖口が汚れるから!」と思った人は、「ブッ・ブー」です。逆なんです。つまり「袖口で、傷口を汚染しないため」なんです。よく観察してください。大学病院で半袖を着ているのは若手が多いです。現場仕事は若手の役割です。地位の高い先生は長袖の普通の白衣でおられることが多いでしょう。またそのほとんどの先生が、ネクタイを着用していると思います。ケーシーの上に長袖の白衣を重ねている方は、寒いのかも。開業医は、すべてをこなさなくちゃいけないので、半袖が多いのでは。ネクタイしての白衣は私には縁がないかな。みすぼらしい腕になったら長袖のケーシーになるかもね。最近は、子供さんなどにいらぬ緊張感を与えないようにと、白衣を着ずに診察する医師も多いようです。時代や医学の進歩とともに、着衣も変わりますね。