鉄道マニアにもいろいろだが、私はどちらかというと乗り鉄であり、食べ鉄である。

自動車の運転も好きだが、何といっても、鉄路はお酒が飲めるから。それと心ゆくまで本を読めるから。

学生時代は合宿地の白馬から大阪まで鈍行や快速のみで、糸魚川経由で帰った。兼六園へ寄ったりして街ブラを楽しんだ。

娘の中学受験後は、ちょうど寝台特急「なは・あかつき」が運航終了するとのことで、家族で寝台特急を楽しみ、翌日吉野ヶ里遺跡を訪ねた。

貧乏な研修医時代は、東京の学会へは夜行バスの「ドリーム号」を利用した。早朝の新宿のドブ臭さは忘れない。

ようやく新幹線に乗れるようになったが、最近は長時間じっと座ると膝の痛みが耐えられない。腰もしんどいし。

還暦を過ぎ、「もう許されるやろう」と最近はグリーン車を奮発することにしている。

今回、札幌の学会に出席するにあたり、経験したいことが一つ。それは東北新幹線の東京-新函館北斗間で「グランクラス」に乗ることだった。産経新聞のコラムに触発されたのだが、わざわざそんな酔狂に付き合う家族もいない。学会開催告知に、天啓だと感じた。

一人席は、一編成にわずか6席である。しかも三連休初日。午前十時の受付開始は診察中。旅行社の力に賭けた。切符確保の報に思わず握りこぶし。

前日はわざわざ東京泊。翌朝5時起きである。

グランクラスは軽食がつくし、飲料はアルコールを含めて飲み放題である。他のあてはコンビニで調達。

出発まもなく、アテンダントのサービス。やはり全員アルコールを注文。ビールとワインの2品を申し出たのは私だけであった。

白ワインは山形県朝日町のもの。赤は山形産のブドウを用いたマンズワイン。どれも美味しかった。酒飲みと見切られたのか、日本酒も勧められて当然いただく。これは仙台伊達藩御用達「勝山の献」。これも最高。函館に到着するまでに都合5合ほどいただいてしまった。

車窓から北上を感じつつ、とっておいた「門田隆将さんの日本・遥かなり」。無策の日本政府と無為の国民に怒りながら、読書を楽しんだ。

膝も腰痛も起こらず、快適な時間。酔いも感じない。

ただ函館の乗り継ぎが短時間過ぎて、楽しみにしていた「函館のいかめし」を買えなかったのは残念でした。

次のグランクラスはもうないと思いますが、贅沢させていただきました。

とてもゆったりとした、貴重な時間を過ごしました。