「ズンズン運動」なる、ベビーマッサージか何か知りたくもないが、それで乳児を殺したとして女が逮捕された。
整体の一種とのこと。
これで喘息が治るだと。あほか。
日本人は70年前に戦争に負けたにもかかわらず、いまだに論理的思考ができないものとみえる。
米国の科学と物量に負けたのではなかったか。精神のみでは勝てないと学んだのではなかったか。
WHOが「日本の医療は最高です」とお墨付きを与えているにもかかわらず、なぜか国民は医師を心から信頼していないようである。
医師は勝手な思い付きで物を言うのではない。エビデンスという統計学的な結果に基づいて、話をするのである。
だから、治らないものは治らないという。
それでもなお光明を見つけたいのが人情。
そこに怪しい輩が跋扈する土壌ができる。
「整体」もその一つである。腰痛でよく日本人は特に大阪人は「整体」へ行くが、どんなものかわかっているのかね。
中には風俗営業法管轄のものもある。国家資格である柔道整復師の行う施術もあるが、彼らとて国から許可されているのは、打撲や捻挫に対する施術のみである。
それに「腰痛=もめば治る」という発想。おかしいと思わんの?昨年も整骨院で治らんからというて来院された患者さん。癌の骨転移だった方がおられた。悲劇である。
ただ彼らに有利な点はある。彼らは医者じゃないので、たとえ癌の転移であっても「わしが治してやる」と言って罪にならない。なぜなら診断しなくていいからである。彼らが「治せる痛み」と考えればそれでいいのである。
医者はそうはいかない。「治すには時間がかかる」とか「手術しか方法がない」とか厳しい真実を述べなけらばならない。なぜなら診断を下せるのは医師だけだからだ。
すなわち「診断書」をかけるのも医師だけである。
だから誤診すれば、裁判で負けることもあるのである。整体関係の方は、そもそも誤診がないことになる。裁判に訴えても「あんた、医者と違うって知ってて通ったんでしょう」で患者はまける。
「整骨院へ通ったが治らない」といって受診する患者さんには、正直舌打ちしたい気分である。こういう人はよくなっても、また同じことを繰り返す。
まぁ、整骨院に通っている人が皆、整形外科を受診すればそれこそ大変なんでかまわないのだけれど。私は患者さんを教育するために、日々を過ごしているわけではない。意識レベルの高い人が来ていただければそれでけっこう。
さらに、人の思考に今回の「ズンズン何某」問題があると思う。
人は「自分が選択したことは正しいと思いたい」のである。
また「親しい関係にある人間の意見を正しいと思う」のである。
だから、腰が悪くて歩けないくせに、近所のおばさんに「歩かないから痛いし、歩かな寝たきりになる」と言われて、私が何度「万歩計をはずせ」と言っても毎日記録するのである。
ネットで自分の症状を調べて、受診した医療機関で「自分はこういう病である」と言って、私の意見に耳をかさないのである。
スマホをいじくるべきは、「どの医療機関にかかるべきか」を調べることである。まちがわないように。
医師は、大学で6年間メチャクチャ厳しいカリキュラムのなか過ごし(厳しすぎると思う)、それから研修を4年間、そして専門医になるために6年間最低修行する。この間は、ほぼ過労死基準を超える激務である。
知識に経験を加えるわけである。さらに毎週のようにある講演会聴講や論文読みで日々知識をアップデートする。
ただし、皆がそうではないことは認める。男女の仲と同じ。医師を診る眼が大事。残念ながらその眼を持たぬ患者さんが多いように思う。他科の話ですが。
整形外科の悲哀は、美容外科と間違われることや、整体師のように自分を医師に見せかけたい人にころっとだまされる人が多いこと。
ちなみに柔道整復師は、高卒後専門学校3年でなれる。使う教科書は医学生の1年分にもならないだろう。
最後に一言付け加える。あの韓国ですら、柔道整復師というものを廃止した。少なくとも日本では、怪しい施術は風俗として遇し、整形外科医が柔道整復師の施術を監理するシステムを作るべきだろう。