入学式で「スマホ捨てますか、大学やめますか」と問うた信州大学山沢学長の訓示に対し、今度は奈良医大の細井学長が「スマホを使いこなせ」と訓示、論争になっています。
細井先生は医師らしく「スマホが独創性のある学生を育てることを阻害しているとはエビデンス(統計学的な證明)がない」と発言したらしいです。
では私は言いたい。それこそ「阻害していないエビデンスを示せ」と。
細井先生は知性や教養は何で培うと思われるのでしょうか。私は読書と論争以外にないと考えます。
ぜひ細井先生には、スマホ使用時間と読書量の関係を調べていただきたいと思います。
成績はたぶん相関はでないでしょう。医学部の試験は人物と無関係ですから。
私はスマホのツールとしての機能を否定しません。ただたとえば電車や病院の待合室での光景をご存知かと感じます。
電車で親子が会話もせず、お互いのスマホに夢中になっている。診察室でも子供の病状を説明しているときに、スマホを見ているバカがいます。
ではスマホを使いこなせないのは、レベルの低い人だけでしょうか。奈良医大に合格するくらいですから、学業の成績は素晴らしいのでしょう。上位2.5%より上なはずです。
細井先生は最近の学生と論じ合ったことがあるのかな、というのが私の正直な感想です。
今時の学生は、真面目で人当たりもよく、私のような人間に対してもきちんと対応できます。しかし、深みのある会話がなりたたない者が多い。物事を知らないのです。彼らを責められません。大学に入るために必死で勉強して、入学したらしたで厳しいカリキュラムに追いまくられて。人間かくあるべしという学問を学ぶ機会がないのです。そしLINE世代と言いますか、お互いが干渉せず物わかりのいいふりをして、時間を共有する。
残念ながら、後輩たちが胸ぐらつかむような論争をするところを見たことがありません。話しててつまらない者が多い。
奈良医大はどんな医師を作ろうとするのでしょう。医学マシーンですか。
改めて言います。スマホは使いこなすのは大切です。残念ながら使いこなしつつ、人間性も磨ける人材がごくわずかであることも認めてくださいよ。そのうえで、学生の6年間くらい、まずスマホなしで生身の人間のぶつかりあう時間を過ごすべきでないですか。
私なら、北杜夫さんが青洲時代を過ごした、信州大学へ子供をやらせます。
そして私は、本を読まない人間を信頼しないし、対等に扱いません。底が浅いから。