整形外科の特徴は、人間らしく元気に過ごせるようにすることです。

先週末、勤務医向けの骨折研究会に出席しました。

整形外科も他科と違わず、専門化が進んでいます。脊椎外科や手の外科などですね。施設にっては人工関節しか扱わない医師もいます。

働き方改革が進み、医師も週末や時間外労働を避ける傾向がでてきました。

そうなると突発性の高い「骨折や外傷」を扱う整形外科医が減少してまいりました。

私なぞびっくりです。骨折治療こそ整形外科の王道だろうと思っていましたから。

ひとつには医師の働き方。研究会ですら週末の土曜日を避けるようになってきました。週末は自分の時間なんだそうです。当院が土曜日休みなのは、職員確保ができないからなので、同じようなものですね。

それと、骨折は態様が様々ですので、同じ治療はないと言ってよく、ですので学会で発表するための統計的処理ができず、体系的学問として成立しにくいのです。

整形外科の全手術の55%が外傷の手術なのにもかかわらず。

ですので、日本の医学部に「骨折治療」を専門とする教授はいません。外傷を教えない大学も出現しました。基幹病院整形外科の長も骨折の専門家はほぼいません。いきおい、骨折を極めたい整形外科医は減っていきます。そのうち骨折の診断治療ができない病院もでてくるでしょう。儲からないからよけいにね。

母校大阪市立大学(現公立大学)は医局内に10番目の専門分野として「骨折研究班」を立ち上げました。教授の意思を感じます。

骨折治療は外傷だけではありません。

今日本人が生きている間に、二人に一人は「癌」になります。またがん治療が発達したおかげで、癌患者も長く生きるようになりました。ただ、抗がん剤投与や放射線治療で骨が弱くなったり、普通の生活を送らなくなったりで、骨折する方が増加しています。

ここで他科だと、「また骨折したらあかんから安静」処置がとられ、ますます身体が弱くなり、以後ベッド上で余生を過ごす方が多いのです。

今は、癌の骨転移に対しても手術をして、歩いて楽しい人生を送れるように技術は進歩しています。残念なことにそれを知らない他科の医師がとても多いのです。

生きていても寝たきりじゃ意味がないと考える整形外科を、もっと理解してほしいものです。

薬で幸せな人生は過ごせません。