変形性膝関節症の治療に用いるヒアルロン酸の注射薬はいくつかの製薬会社から発売されている。

そのうちのひとつ「スベニール」という製品が製造中止となることが決まった。

売れなくなったからではない。現在も市場シェア20%をしめる大事な薬だ。

ヒアルロン酸は飲み薬と違い、製品によってヒアルロン酸の分子量が異なるため、患者さんによって使い分けたりする。医師の考えに基づく使い分けも当然ある。だからこの薬が無くなったから代わりにこれをというわけにはいかない。

製造中止の理由は工場の生産ラインの老朽化であるらしい。

新しく作り直すにも、年々下がり続ける薬価のために利益が見込めないのだそうである。国民は薬価が下がればよし、と思うだろうが下げすぎた薬価による弊害が顕著になってきた。

利益が出ないのでメーカーが撤退するのである。

世界一安く、しかもWHOから世界一と評価を受ける日本の医療だが、製薬メーカーと医療関係者の献身によってなりたっているのである。

いよいよ日本の医療崩壊はコロナなくとも始まった。

いろんな薬が手に入らなくなってきた。

誰もが知る基幹病院ですら薬が枯渇し、市中薬局に薬を求めるようになった。

調剤薬局も今まで使用の薬は処方箋をもらっても手に入らないことが増えてきたらしい。

製薬メーカーは時には百を超える種類の薬剤を製造しているので、これをすべて並行して製造できない。消費動向を考え、一定期間にある種の薬を大量に作るのである。だから今回のコロナのように急に処方量が増えても急な増産はできないのである。無理をすると他の薬が欠品する。

まさに日本は三流国家の様相を呈している。これも製薬メーカーにぎりぎりの経営を強いた財務省の悪政の結果である。

近いうちに必ず来る南海トラフ地震。これが起こったら、日本の医療は崩壊する。断言する。薬も治療備品もないのである。メーカーも医療機関も薬局も経営が苦しいから在庫を最低限度に絞っている。

当院でも患者さんが殺到すれば3日持たない。

また薬剤の製造中止には別の理由があって、実は日本の製薬会社は多くが海外の巨大製薬会社の傘下にある。かのスベニールを製造する中外製薬もそうで、たぶん親会社の意向であろう、昨年もエディロール、ボンビバという骨粗鬆症薬も撤退した。

癌治療薬を重点的に攻めるのだそうだ。

結局は儲かるかどうかが巨大企業には大切なのである。多くの人に関係ない突拍子もなく高価な薬を売る方が利益率は高いのでしょう。

落日の日本。国民は覚悟した方がいい。定見なく目先しか考えない財務省が国を亡ぼす。