河野行革担当大臣が「ハンコを失くそう」と頑張っています。

もちろん事務手続きでの簡素化を目指してということですね。IT時代、世界との取引にハンコが必要なわけでもないでしょう。

前政権では「IT担当大臣」がハンコ議連の会長という笑い話もありました。

私もそれには大賛成です。ただ条約の締結などは皆固有のサインをしますので、ハンコが全くなくなることはないでしょう。

私の父は地方官吏でした。役所はハンコの牙城です。そのせいかハンコには煩かった。まず「印鑑」という言葉を厳密に使っていました。「ハンコ」は正しくは「印章」です。印鑑は「印章」で押された「印影」をいいます。「物を知らんと思われる」と、これは厳しく言われました。また少し傾いていたり、濃淡があっても、こっぴどく叱られました。

私は開業するまで、「人生を左右するような」押印をしたことがなかったのですが、テナントの契約をする際に、大家さんが両手で押し抱く様に押印される様を見て、初めて社会に触れた気がしました。今でも鮮烈に覚えています。以後私もそうしていますし、感謝しています。

 今私が診療所で使っているハンコは、生前父の実印だったものです。少ない遺品のひとつです。今では貴重な象牙なので、新たに彫りなおしました。

「お札にあるような縁の細い印鑑がいいのだ」と申しておりましたので、現代の名工に指定されている方に手彫りしていただきました。写真の通りです。少し短くなりましたがけっこういいでしょ。診断書の印鑑に使っています。実印のほうがしょぼいです。

娘たちにも、成人のお祝いに同じ名工の方に印章の3点セットを彫っていただきました。ささやかな父の想いです。でも銀行印は不要になるでしょうね。

 

またもう一本認め印を持っていますが、これも父が役所で使っていたものです。印面が斜めになっているのがお分かりいただけますでしょうか。それほど役所はハンコ文化が浸透している証でもあります。